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偽 ・ ワーカホリック ...
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2005/09/11 (Sun) 鎮魂歌。
「其は、  命の源にして全てを潤すもの ――。」


男の声がする。それは低い声で少々抑揚に欠けていた。


「それは海であり、大地であり、風であり、雨でもあり。そして 命でもあり死をも潤すもの。」


そこは森の中であった。
朝焼けの前の一番暗いベルベットの漆黒が帳となって世界を多いつくす時間。



「命よ  永久の営み、安寧願う檻の中で木霊を聞くがいい。」


男が立つ、その場所には男の他に附するものがいた。
それは大きな大きな もはや肉塊と化した何か。
男の持つ剣から滴り落ちる血からしても 男が討伐した魔物か何かなのだろう。


「死よ  いと深き深遠、 安息叫ぶ澱の中で声を潰せ。」


男の真っ直ぐに掲げる剣には青白い燐光が幾つも幾つも宿っていた。
魔力の高まりと呼応する様、息づく様に仄かに揺らめく光たち。
その見えない脈動を感じ取っているのか男の三連ピアスもちりりと涼やかな音をその場に生み出していた。
青く白い光に死した亡骸が照らされ、己が血に附すその姿が浮かび上がる。


「母にして、父なる水よ。 全てのものを しずめたまえ    。」

男の声は 慈愛には満ちていなかった。
他者の命を奪ったのだという感慨も、 戦いに猛る調子もその声からは感じ取れない。
唯々、 唯々   その声は死者の永久なる安らかな眠りを祈っているのか 静かに、静かに   強く。
そんな抑揚を欠く声が紡ぐ呪文は高まりを見せ、 男の剣に光は殺到する様に集まっている。
男の瞳は閉じられた侭で その暗闇の中に微かにうつる 光の残滓だけを追う様に。

「つとめて密やかに、 つとめて静やかに、  つとめて、慎ましやかに。」


剣に集まっていた光が蛍の様にひとつひとつ飛んでいく。
木々の枝の梢が天蓋となっているこの場所に 即席のプラネタリウムを作る様に上へ、上へ広がりを持って。
光の球が一つもなくなった後でもまだ剣は光っていた。
ただし、その色は白。混ざり気のない  限りない純白が漆黒の闇に浮かんでいる様。


「どうか、 彼のもののからだと魂と 運命に 優しい雨の恩寵を。」


男は閉じていた目を開く。
その色は、大地と良く似た暖かい栗色をしていた。
青く白い光に煌く栗色に赤黒く濁った血に全身を彩られた死したものがうつる。


「   ...リゼレーション。」


声は解放を、と 決然と声は唱える。
それは附したものとの決別の言葉であり、同時にそれを弔う鎮魂歌の終わりでもあった。


「今はもういない きみを 誰ももう起こしたりはしまい。」


そう声がまだ紡ぐその間にもこの場所の穢れを全て浄化するべく召還された水が降り注ぐ。



「だから 静かにお眠り。」










闇を透く青白い光。
それは雨が終わると同時に闇に飲まれ、消えていく。






そうしていつもと同じ様に夜が明けて、また新しい一日が始まって。
また いつもと同じ様に誰かが死んで 誰かがこの世に生を受けるのだ。


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